試される"生きる力"の旅(前編)

2014-08-20 (水)
- 紀行文/関東地区

ふとしたお昼時だった。

都内の出張先で、携帯電話とSuicaと家の鍵を職場に忘れてきたことに気付いたのだ。

「さて、どうしたものか……」

なんとも情けない長い半日が始まった。

とある事情があり、職場から慌てて出張先に向かうハメになったのだ。
そのため机上に置いてあった携帯電話・Suica・家の鍵(職場の鍵を含む)をカバンにしまうことを忘れた。

なんであの時確認しなかったのだろうかっ!!
など悔やんでも後の祭り。恨むなら慌てた原因を作った自分の不甲斐なさを恨むしかない。 ただ財布や身分証明書がカバンに入っていたことは不幸中の幸いだった。

出張は17時まで終わらないため、行動するならその17時以降となる。

17時以降どういう行動を取るべきだろうか。
考えた選択肢は……。

  • (1)職場に鍵を取りに戻る。その後帰宅
  • (2)不動産屋に行って家の鍵のスペアキーを借りる
  • (3)諦めて宿泊先を探す

選択肢(1)職場に鍵を取りに戻る。その後帰宅

出張先から職場までは最短で2時間はかかる計算だ。職場から自宅までは1時間20分程度。ちなみに職場は夏休み中。あまり人がいない上、この時期は帰宅は超早い。 施錠員さんが夕方きてくれるが、確か18時には職場を施錠して帰ってしまうはずだった。

出張後に電車に飛び乗っても到着は19時か……。もう誰も残っていないだろうか。
そして携帯電話に登録してある職場の電話番号は自分の脳ミソにはこれっぽっちも記憶されていないという有様。
家の鍵と職場の鍵がセットにしてあるので、誰もいなければ門すら開けられない。

このように考えたため、リスキーな選択肢(1)は却下された。

選択肢(3)諦めて宿泊先を探す

何年か前にも鍵を職場に忘れ、自宅近くのマンガ喫茶に宿泊休憩したことがあった。
料金はホテルほど高くはないが疲れは全然取れず、あまりやりたくない。まだ望みはある。

と、いうわけで選択肢(2)が一番現実的だった。
幸いに財布と身分証明書(免許証)はある。昔、家の鍵を実家に忘れてきたことがあり、スペアキーを借りた実績もある。
携帯電話は別に1晩ぐらいなくても困りはしない。私はケータイ依存症ではないのである。強いて困るとすれば移動中の暇つぶしと目覚ましぐらい。
私にとって携帯とはその程度のものなのである。
ガラケー万歳!

不動産屋は何時までやっているか知らないが19時ぐらいまではやっているはず。今から直行すれば18時には到着できる。余裕のよっちゃんイカなのである。
強いて懸念材料があるとすれば倒産していないことぐらいかな。
わはははははははは。

こうして私は電車に飛び乗り1時間かけて不動産屋に向かった。

"生きる力"はあるか

ところで現行の学習指導要領では"生きる力"を育むことが求められる。
学校生活で学んだ知識を元に、世の中で生きていくためにその知識を応用する--。

……教える側の自分にその力が備わっているかどうかは怪しいけど。

18時に不動産屋に着いた私は愕然とした。
不動産屋の入口は堅く閉ざされており、内部に人の気配はなかった……。
……そんなまどろっこしく書かなくても、ガラス張りの入口に行けば閉まっていることは明らかだった。

なぜだっ!
夏休みのこの時期。いくら閑散期とは言え18時前に閉店する不動産屋がどこにあろうか。いや、あるまい(反語)。
もしや懸念していた倒産か!?

……ガラス張りの入り口には「水曜定休日」の文字が。
神は我に七難八苦を与えよなど願ったつもりは全くないが。

ふと脳裏をよぎった新たな選択肢"(4)実家に帰る"を頭を振って追い出す。唯一覚えている電話番号は実家の番号だからだ。
だがそれは"生きる力"のゲームオーバーと思われた。

となると選択肢(3)諦めて宿泊先を探す……しか残っていなかった。

放浪の旅

今の時代は便利な世の中になった。
ケータイ1台あればネットでヒュヒュッと検索して探せばよいのだ。探し方が分からない情弱は放っておいて、そんな便利な世の中に……

……って、携帯も職場に忘れてきたではないか。

何もできぬ。
職場の最寄り駅に怪しいビジネスホテルがあることは知っているが電話番号を知らない。そして営業しているかどうかわからない。先に書いたとおり調べようがない。

通勤で使っている沿線の車窓からの風景を思い浮かべて、駅前に宿はなかったか脳ミソを振り絞ってみる。
普段何気なく見ている(というか、通勤中は車窓からの景色など見ていない!)ものは脳ミソに何も残っていない。

一応自宅から徒歩20分の通勤最寄り駅近くにホテルがあることは覚えているが、せっかく宿泊するのだから職場に少しでも近い場所がよいと思うのは人間として当然の思考。

とりあえず、そこそこ大きい駅ならホテル(宿)があるに違いない。
再び電車に乗り、そこそこ大きい駅を目指す。

いったいどうなるのか。
後編に続く。

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